2. 地震動予測地図作成条件

  図2-1 には、「宮城県沖地震の形状評価」に基づく宮城県沖地震の震源域を示す。A1 断層、A2 断層の範囲は、主に、Yamanaka and Kikuchi(2002)の1978年宮城県沖地震と1936 年宮城県沖地震のインバージョン結果に基づいたものである。予測地図作成にあたり、A1 断層、A2 断層、B 断層の面積や位置、形状も、図2-1 の赤枠で与えられた。また、A1 断層のマグニチュードは7.5、A2断層のマグニチュードは7.4 と与えられた。したがって、クラックモデルをあてはめて考えると、静的応力降下量が30bar に拘束されたことに等しい。さらに、「宮城県沖地震の長期評価」に基づく宮城県沖地震の最長活動間隔42.4 年とプレートの相対運動速度約8cm/s からカップリング率100%と考えて推定される滑り量339cm よりアスペリティの平均滑り量が小さいという条件も与えられた。
 単独の場合は簡便法(4 章参照)と詳細法(4 章参照)により強震動評価を行い、連動の場合は簡便法により強震動評価を行う。簡便法では、広域を概観し、最大値(最大加速度および最大速度)および震度のみを評価対象とする。詳細法では、特に震動の大きい地域を対象とし、地域の詳細情報を重視して、最大値のみならず時刻歴波形も評価する。簡便法では、A1、A2、A1 +A2、A1+A2+B の4 つの断層に対して、詳細法では、A1 とA2 の2 つの断層に対して地図作成を行うことが求められた。また、A1 断層については1978 年宮城県沖地震の再現、A2 断層については1936 年宮城県沖地震の再現を想定した強震動評価を行い予測地図を作成し、計算波やそれに基づく計測震度と観測波や観測震度との比較検討を行なうことが求められた。これは、想定宮城県沖地震は、観測記録がある海溝型地震に対してシナリオ型の予測地図作成を行う初めてのケースであることから、今後、観測記録がない海溝型地震のシナリオ地図を作成するのに先立って、予測手法の検証が必要なためによるものである。
 図2-2 には、地震動予測地図作成領域を示す。図2-2 の地図全体が簡便法による地図作成領域、2 つの四角の領域のうち赤枠がA1 断層、青枠がA2 断層に対する詳細法のうち三次元有限差分法による計算領域である。簡便法による地図作成領域の4 隅の座標は、(北緯36°50′、東経139°)、(北緯40°、東経139°)、(北緯40°、東経143°)、(北緯36°50′、東経143°)である。A1 断層に対する三次元有限差分法による計算領域の4 隅の座標は、(北緯38°、東経140.65°)、(北緯38.75°、東経140.65°)、(北緯38.75°、東経142.70°)、(北緯38°、東経142.70°)である。A2 断層に対する三次元有限差分法による計算領域の4 隅の座標は、(北緯37.75°、東経140.65°)、(北緯38.50°、東経140.65°)、(北緯38.50°、東経142.70°)、(北緯37.75°、東経142.70°)である。深さ方向の計算領域は60km である。詳細法の地図作成領域は、三次元有限差分法による計算領域のうち海洋部分を除いた部分とした。つまり、図2-3 で示される約90km×90km の範囲のうちの陸地部分が地図作成領域である。この図には、計算波形の例を表示する5 つの地点も示している。開北橋(DKHB)と石巻気象台(JISN)は石巻市、東北大学(THUV)と仙台気象台(JSEN)は仙台市にある。開北橋(DKHB)、東北大学(THUV)、樽水ダム(DTMD)は1978年宮城県沖地震の加速度記録が得られている地点である。仙台気象台(JSEN)、石巻気象台(JISN)は、1936 年宮城県沖地震、1978 年宮城県沖地震の際に震度が得られている地点である。
 簡便法では約1km×1km の間隔、詳細法では900m×900m の間隔のポイントで計算結果を出力する。詳細法の出力ポイント数は100×102 個となる。


← Back Next →