2.地震動予測地図作成の意義

2.1 地震動予測地図作成の概要

2.1.1 背景

 平成7年1月17日に発生した兵庫県南部地震は、6,400名を超える犠牲者を出し、我が国の地震防災対策に関して多くの課題を残した。特に地震に関する調査研究に関しては、その研究成果が国民や防災機関に十分伝達される体制になっていないとの指摘がなされた。この地震の教訓を踏まえ、全国にわたる総合的な地震防災対策を推進するため、議員立法により、平成7年7月に地震防災対策特別措置法が制定された。同法に基づき、行政施策に直結すべき地震に関する調査研究の責任体制を明確にし、これを政府として一元的に推進するため、政府の特別の機関として、地震調査研究推進本部が総理府に設置(現在:文部科学省に設置)された。地震調査研究推進本部には、政策委員会と地震調査委員会が設置され、(1)総合的かつ基本的な施策の立案、(2)関係行政機関の予算等の調整、(3)総合的な調査観測計画の策定、(4)関係行政機関、大学等の調査結果等の収集、整理、分析及び総合的な評価、及び(5)それらの評価に基づく広報がその役割とされた。
 地震調査研究推進本部は、平成11年4月に、今後10年間程度にわたる地震調査研究の基本方針、活動の指針として、「地震調査研究の推進について−地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策」(以下では総合基本施策と呼ぶ)を策定した。総合基本施策では、地震防災対策の強化、特に地震による被害の軽減に資する地震調査研究の推進を基本的な目標に掲げ、当面推進すべき地震調査研究として以下の4つを主要な課題とし、このために必要な調査観測や研究を推進するとした。その4つの課題とは、@活断層調査、地震の発生可能性の長期評価、強震動予測等を統合した地震動予測地図の作成、Aリアルタイムによる地震情報の伝達の推進、B大規模地震対策特別措置法に基づく地震防災対策強化地域及びその周辺における観測等の充実、及びC地震予知のための観測研究の推進である。
 特に、地震動予測地図の作成は、推進すべき主要課題の筆頭に掲げられ、これに基づき地震調査研究推進本部地震調査委員会では、平成16年度末を目途として、「全国を概観した地震動予測地図」の作成が開始された。独立行政法人防災科学技術研究所では、「全国を概観した地震動予測地図」の作成に資するため、平成13年4月より、特定プロジェクト研究「地震動予測地図作成手法の研究」を立ち上げ、地震動予測地図の作成に資する技術的な検討及び地図の作成作業を行ってきた(図2.1.1)。本プロジェクト研究においては、地震動予測地図作成に必要な技術的問題に関しての研究開発、及び、地震調査委員会及び関連する部会・分科会の指導の下に、実際の地震動予測地図作成に関する作業を実施している。


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