3.3. 伝播経路モデル

 地震基盤以深(伝播経路)のモデル断面を図3.3-1 のように設定した。設定根拠は以下の通りである。
 a 層(上部地殻)の 値以外は、重力等に基づき作成されている深部地盤モデルの値とし、 値は、Yamanaka and Kikuchi(2002)が1978 年宮城県沖地震のインバージョンに用いた構造とする。b 層(上部地殻)とc 層(下部地殻)の全ての物性値、及び、これらの層の下端の深さは、Yamanaka and Kikuchi(2002)が1978 年宮城県沖地震のインバージョンに用いた構造とする。
 Yamanaka and Kikuchi(2002)が1978 年宮城県沖地震のインバージョンに用いた構造にはプレートが入っていないため、プレート及び深さ26km 以下のマントル構造は、以下のようにして設定した。
 d 層(上部マントル)の は、三浦・他(2001)の推定値である=8.0km/sとした。Umino et al.(1995)が東北地方のプレート境界を sP depth phase から推定したときに用いられている=1.782 という関係、及び、中島・他の走時の逆解析から推定されている=1.77 という関係を用いて計算されるの値は、四捨五入するといずれも=4.5km/s となることから、=4.5km/s とした。密度については、地域は異なるが、伊豆半島を縦断する測線でAsano et al.(1980)が観測重力異常と推定構造から計算される重力異常との比較に用いた密度構造を参考に、2.9 とした。
 e 層(海洋性地殻)の層厚は、三浦・他(2001)が海底地震計とエアガンを用いて推定した構造の図から読みとり、7.5km とした。 も、三浦・他(2001)の図からこの層の平均的値を目視で読み取り、=6.8km とした。=6.8km は、Nishizawa et al.(1992)が三陸沖で推定している値とも一致する。強震動の計算ではこの部分に断層面を置くことになるため、その は、Yamanaka and Kikuchi(2002)が1978 年宮城県沖地震のインバージョンの際に用いた断層での平均的な値である=3.93km/s、 =3.0 とした。なお、この場合、=1.73 となるが、これは、尾鼻・他(2000)が室戸岬沖の海洋性地殻においてからを換算するために用いられた値と一致する。
 f 層(海洋性地殻下部の上部マントル)の は、三浦・他(2001)の推定値=8.0km/s とした。 は上部マントルと同様の=4.5km/s とした。密度については、地域は異なるが、愛知県沖で行なわれたエアガン海底地震計探査結果(Nakanishi et al., 1992)を参考に、3.25 とした。
 d, e, f 層の 値は、Tsumura et al.(2000)が太平洋プレートで発生している微少地震から推定している3 次元 構造を参考とし、c 層とのつながりを考慮して設定した。 とした。


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