3.3 伝播経路モデル

 当地域は、ユーラシアプレート、フィリピン海プレート、太平洋プレートの3つのプレートの会合点である。関東地域の大部分はユーラシアプレートに属し、その下方に相模・駿河トラフから沈み込んだフィリピン海プレートが存在し、さらに下方には日本海溝から沈み込んだ太平洋プレートが存在している。関東から東海地域の高感度地震観測網で観測された地震の震源分布から作成されたプレート等深線分布を図3.3-1に示す。これによると三浦半島周辺では、太平洋プレートは100km前後となっており、フィリピン海プレートは数キロから40km程度となっている。
 想定している断層モデルは、上端深さが3kmで断層幅が17km、傾斜角が45°となっていることから、下端深さは約15kmとなる。伝播経路のモデル作成に際し、この深さは、対象領域でフィリピン海プレート含まれる40kmまでを考えることにした。
 震源モデルから地震基盤までの伝播経路のモデルについて図3.3-2に示すように設定した。
 上部地殻の層厚、P波速度、S波速度、密度については、Yamazaki et al. (1992)が設定したそれぞれ13km、 =6.15km/s  =3.4km/s  =2.7 とした。
 フィリピン海プレートの上面深度分布は、図3.3-1の分布を読みとることにした。プレートの厚さは、仲西・他 (1994) によるエアガンを用いた探査によって求められた東海沖でのフィリピン海プレートの詳細な沈み込み形態から、7kmとした。また、P波速度についても仲西・他 (1994) より6.8km/sとし、S波速度は関口 (2000) による神奈川県中央部を通る南北断面のポアソン分布からポアソン比を読み取り( =0.25) / =1.73を求め、これより3.4km/sと設定した。密度は、Yamazaki et al. (1992) が設定した 2.9 とした。
 上部マントルのP波速度は、仲西・他 (1994) の探査結果から7.8km/sとした。S波速度は、Yamazaki et al. (1992) が設定した =7.5km/s、 =4.3km/sより / (=1.74)を求め、4.47km/sとした。密度は、Yamazaki et al. (1992) の3.2 とした。
 なお、図3.3-2の@Aの層での物性値については3.4節を参照されたい。


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