4. 断層モデルの設定

 地震調査研究推進本部地震調査委員会から公表された「三浦半島断層群の長期評価について」( 2002年10月9日、表4.1-1参照、以後「長期評価」と略す )に基づき、三浦半島断層群によるシナリオ地震地図作成のための地震シナリオおよび想定地震( 以後「想定三浦半島断層群地震」と呼ぶ )の断層モデルを設定した。

 4.1 地震シナリオ

 三浦半島断層群は三浦半島断層群主部と三浦半島断層群南部に分けられ、三浦半島断層群主部は衣笠・北武断層帯と南側の武山断層帯に分けられる(図4.1-1)。これらの断層群はフィリピン海プレートの沈み込みによる巨大地震(関東地震)の副断層(垣見・他、1974)とも考えられる。地震のシナリオとしてはプレート境界巨大地震の発生に伴う副断層の破壊か、プレートの沈み込みによる地殻のひずみによる地殻内破壊の2通りが考えられる。しかし1923年の関東地震では武山断層帯のごく一部でのみしか断層が出現しなかったこと、相模トラフ沿いのプレート間地震は今後の長期評価の結果を待って別の機会に検討予定であることから、本検討では基本的に関東地震とは切り離して地殻内のみで発生する地震を対象に三浦半島断層群を考える。
 長期評価によれば、三浦半島断層群主部は三浦半島断層群南部の最新活動である2万年以上前から現在までに3回の活動を起こしており、最新活動も活動間隔も異なる。このことから本検討では主部と南部はそれぞれ単独に活動すると想定する。
 長期評価によれば、三浦半島断層群主部の衣笠・北武断層帯と武山断層帯の最新活動は前者が6-7世紀、後者が約2千3百年以後〜約1千9百年以前と異なっており、単独に活動している。ただし両断層帯の距離が近いことから、同時活動の可能性も指摘されている。従って、主部の2つの断層群は、各々単独に活動する場合と同時に活動する場合が想定される。
 以上まとめると、以下の4ケースが想定される。

  1. 三浦半島断層群南部による地震
  2. 三浦半島断層群主部の衣笠・北武断層帯による地震
  3. 三浦半島断層群主部の武山断層帯による地震
  4. 三浦半島断層群主部の衣笠・北武断層帯と武山断層帯の同時活動による地震

 シナリオ地震選定にあたっては地震の規模も重要である。長期評価によると三浦半島断層群主部のマグニチュードは6.7程度もしくはそれ以上、三浦半島断層群南部ではマグニチュード6.0もしくはそれ以上と、南部と比較して主部の方が大きい。また武山断層帯と衣笠・北武断層帯の主部の2つの断層群は活動時期が異なるため、各々単独に活動する可能性が高いと判断される。長期評価によると武山断層帯の方が地震の生起確率が高いため、本検討では武山断層帯単独による地震を検討対象とすること、および、衣笠・北武断層帯単独による地震を補足的に検討対象とすることとした。


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