地下構造データのうち、深部地下構造データについては、その多くが理学的調査研究の成果である。これらの成果は論文・その他資料としてまとめられ、インターネット、学会での発表といった形で公開されていることも多いものの、オリジナルな測定・計測データおよび専門的な解析・分析結果など数値情報としては、一般に開示されている状態とはいえず、はなはだしい場合にあっては、データ自体が計測・観測時点からの時間的経過に伴って散逸している、あるいは散逸しやすい状況に放置されているケースが見られる。この点に関する若干の取り組みの例として、防災科学技術研究所の取り組み事例を3−2で改めて触れる事とする。
浅部地下構造データについては、経済行為の一環として行われる工学的目的の地盤調査類に基づく資料が多く占め、その取り扱いには分野、事業主体等々による特殊性が強く反映している。次節において浅部データを生成している各機関に対して、地下構造データ類の取り扱い等に関する現況調査を実施した結果をもとに整理する。
ボーリング調査による地質資料(柱状図および試験成果)は、地震動予測等を行う上で常に基本となる資料である。地震動の予測あるいは地震による被害評価等に関わる作業を進める場合、その都度、作業主体が対象地域・地方についての資料を保有している公共事業主体等へ資料の貸与・提供を依頼しているのが現状である。この状況は作業主体が国、地方公共団体、公益企業、大学いずれの場合でも同様である。
防災科学技術研究所は、平成15年度に、浅部地下構造データを事業主体として取得する可能性の高い独立行政法人、公団など9団体、関東地方の自治体11団体、公益法人(民間)4団体の計24団体について、訪問面談によるアンケート方式で調査を実施し、それぞれの機関における地盤情報の集積・活用・交換の現状についてまとめた。調査項目は、調査資料の集積度、内容、データベースの進行状況、調査資料の活用状況、データ開示状況、開示の必要性、開示の方法、統合化地下構造データベースの必要性についての認識、その他の意見とした。以下に、調査結果の概要を述べる。
(1) 調査資料の集積度、内容、データベース化進行状況
調査の対象とした機関の約半数強の機関で、調査資料を集中管理している。管理は、部署・出先機関ごととしているケースも多い。地下の土質・地質構成を整理したボーリング柱状図は、ボーリング孔から採取した試料についての土質試験を行った結果ともに保管しているケースが多く、一部に物理探査データも組織的に保管しているケースがあった。電子化の状況は、紙ベースの保管とほぼ半々という結果となり、集中して電子化のケースと部署ごとに紙ベースに二極分化している傾向が見られた。
![]() 図−2 現況調査結果の概要(1) |
(2)調査資料の活用状況
7割以上の機関では、新たな事業計画の推進に際し、過去に取得した資料を比較的活発に活用している。活用にあたっては紙ベースでコピーする場合と、電子化データについては専用ソフトで検索・図化・出力というケースである。その他、調査成果報告書の副本を貸与するケースもあった。
![]() 図−3 現況調査結果の概要(2) |
(3) データ開示の状況
他機関へ提供するという点では、約7割の機関で提供実績があった。大部分の機関では、提供時に利用機関に対し、何らかの利用制約条件を付すことが多く、その例としては、第三者への提供不可、研究目的に限定、商用利用の禁止の3つが大部分を占め、その他、貸出期間を限定、設計目的に限定、報告書のみ提供などがあった。
他機関から提供を受けるという点では、同様に約7割の機関で利用実績があり、利用時に制約条件があった。また、利用にあたっての手続き等が面倒との意見もあった。
提供を受ける目的としては、提供を受ける側が推進・計画する一般公共事業、地盤沈下・地下水汚染対策、地質評価、耐震性検討、設計等の事業に利用するためである。なお、提供されるデータの形態は、ボーリング柱状図を紙ベース(図面)で提供を受けているケースが多かった。
![]() ![]() 図−4 現況調査結果の概要(3) |
(4) 開示の必要性とその方法について
開示の必要性については、資料の開示は事業推進のために有効であるとする意見(利用者としてという条件付きの賛成回答も含む)が9割以上を占める。
開示の方法としては、媒体はインターネットもしくはCD等により電子媒体を経由して開示されるべきであるとの考えが大部分である。開示内容については、柱状図および試験データを望む声が強かった。電子データの様式は、国土交通省電子納品要領のうち「地質調査資料整理要領案」に沿った形式(XML形式)との回答が多いが、形式にはこだわらないとする意見や標準化された汎用性の高い形式を望む意見もあった。
開示の範囲としては、一般公開とするものと、登録制など一定の利用制限をするものがほぼ半々であった。「利用者の立場としては一般公開が良いが、提供者としては参加機関内部」との回答や、「インデックスのみ一般公開し、データは参加機関内部のみ」、あるいは、「閲覧のみ無料で一般公開とし、データは有料で登録メンバーのみ」との回答もあり、事業主体としての守秘義務、個人情報等への配慮などが、強く意見に反映している結果となった。
開示のしくみについては、参加機関のデータを中央データベースセンターが全て保存管理する方式との回答が最も多くほぼ半数を占め、例示した他の2例(各機関が交換用サーバーを持ち、中央の窓口となるサーバー経由で提供する方式および各機関が公開用サイトを維持運営する方式)の回答は約2割で同数であった。その他、方法にはこだわらないもののIT環境の現状とニーズに合うものという回答もあった。
開示する場合の対応可能性については、すでに開示済みないし対応可能との回答と、かなりの準備が必要ないし対応不能との回答がほぼ半々の割合であった。
その他、紙データあるいは新規データについては対応の可能性があるが、電子データでは対応が難しいという回答や先の開示のしくみが中央データベースセンター方式であるなら紙データをそのまま提供するだけで済むので対応可能であるとの回答も見受けられた。
![]() 図−5 現況調査結果の概要(4) |
(5) 統合化地下構造データベースの必要性についての認識
必要性があるとの回答が大部分であり、統合化地下構造データベースへの参加可能性については「可能」ないし「相互運用体制や予算などが整うことを条件に参加できる」との回答が約8割を占めた。
![]() 図−6 現況調査結果の概要(5) |
(6)以上をまとめると、各事業主体がそれぞれの目的で調査資料を整理する動きは一般的に認められるが、整理されている内容としては、報告書を基本として地質( 土質)柱状図および土質試験結果がほとんどであり、依然として紙ベースでの整理が半数程度であった。また、電子化して整理している場合でも、過去の資料まで遡って電子化している事例は半数程度である。これらのことは、各機関に蓄積されている既往調査資料を電子的に活用するためには、相当額の電子化費用とその作業期間が必要であることを示しており、それを反映して予算面等で作業の継続困難を訴える声が多く聞かれた。
機関相互に、地震防災に関わる基礎資料として地盤地質調査資料を広く利用する、という点については理解されているようであるが、相互運用のため費用負担の分担方法やデータベースを構築し維持するための仕組みを、予算化も含めた法的な整備という側面から推進するなど一定の条件が整う必要があるとの意見が多かった。
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