3−3.統合化における課題

 3−1節で述べた調査結果、3−2節で述べた防災科学技術研究所がデータベースを作成する作業における問題および地下構造データベース検討ワーキンググループでの議論の結果を踏まえ、事例に基づきつつ、現状と統合化における課題をまとめる。

(1)浅部地下構造データにかかわる課題

 地下構造データを取得する頻度が最も高いものは、表層(建築基礎範囲)ないし工学的基盤までを目的とする工学的利用分野から発生する地下浅部の地下構造データである。浅部地下構造は強震動予測を行う際には、地下構造データが面的に網羅されていることが重要であり、その意味で可能な限り取得した資料をデータベース化する必要がある。浅部地下構造データは、人口の集中している都市部およびその周辺に集中する傾向があり、その他の地域では希薄となっている。このようなデータの偏在的分布は、予測精度にも影響し、地震防災上の課題である。
 浅部地下構造データの保管・管理も機関によって、千差万別の状況にある。特に地方自治体においては、資料の取り扱いについての温度差が目立ち、インターネット経由で地下構造データを公開している先進的な自治体から、ほとんどデータの電子化に着手できていない自治体まである。
 ある特定の地方レベルで関連する複数の機関がそれぞれ所有する浅部地下構造データをもちより、共用データベース化するという取り組みがなされているケースもあるが、データ保有機関以外のデータ利用に一定の制限があり、かつ特殊な検索表示ソフトの利用が前提となっているなど、利用面で限定されているのが実状である。
 データベース化が進んでいる自治体においても、不十分な予算による維持管理やデータ更新などの継続的作業の困難を訴える声が多く聞かれ、安定的な維持費用や人員の確保のためには、何らかの法的な整備が不可欠との意見もある。その一方で、情報公開の一環として、原則公開が必要との認識が一般的であり、この点は統合化に向けた推進要因となる。
 国土交通省は、昭和61年に地質調査資料の統一様式による整理要領を策定し、それ以降、直轄事業により取得した浅部地盤調査資料(ボーリング柱状図)の電子データを収集している。現在、各地方整備局ごとにデータベースが構築され、これにボーリング柱状図データが蓄積されて、管内の事務所で検索できるシステムとしている。その他の国や公団、独立行政法人では、一部で系統的にデータベース化をしている機関があるものの、依然として研究(個人)レベルの管理に委ねられている機関もある。
 民間事業者では、自社事業によるデータを体系的に整理している例もあるが、報告書のままでの保管の例もある。民間事業者の場合、業界としてデータは非公開が原則という分野もあり、また、自社費用で取得したデータの所有権の問題も残っており、民間事業者が取得したデータを統合化して公開することができるかどうかについては、現状ではかなり対応が分かれる。一方、公益性の高い事業を展開するに際して、耐震設計や災害時対応の事業検討のために、統合化地下構造データベースのような公的なデータベースを利用することに対する希望と必要性は大きいとの意見は多い。このような意識のもとに、自社では報告書のままで保管しているのみにもかかわらず、資料の提供や貸与を可とする事例も見られた。さらに、統合化に向けては、民間事業者もデータを提供することによるメリットなどの条件が整えば提供するとの意見や、一企業がデータを保有していても価値がなくなれば提供するとの意見もある。
 以上のことから、少なくとも公共事業に伴って取得されたデータは情報公開法に沿って公開(ないしは開示)を原則とする、といった認識があることから、その認識よりどころとしてより具体的なシステムとしてデータが流通できる環境へと転化する必要がある。ただし、データ流通にあたっては、原則的に情報が公開されるため、資料取得にかかわる個人情報等が含まれている場合の保護、およびデータの原本性の確保など、仕組み上の工夫と合意の形成が不可欠である。

(2)深部地下構造データにかかわる課題

 地下深部、すなわち対象が深くなれば深くなるほど、研究目的で取得されることが多くなり、その分データの発生頻度は急激に減少する。深部地下構造データを生成・所有しているのは大学や独立行政法人など比較的限定された研究主体の機関が多いが、このような研究は地学的な関心と重要性の高い地域が優先されること、従って、全国的に見ると調査箇所が限定されていることが、地震防災を考える上では課題である。さらに、調査資料が研究レベルでの個人(グループ)利用が優先されるためか、機関がその資料を系統的に保管・管理し、データベース化を図るという作業はあまり進んでいない。資料の発生頻度からみて、1件ごとの資料価値は非常に高く、貴重な、高価な資料である。オリジナルデータを含めた共用性の向上という点でデータベース化の必要性は高い。

(3)関連する資料の収集に関する課題

 オリジナルデータに加え、処理・解析の段階を経て、その都度生成される資料のなかには、以後の利用価値の高いものも含まれるが、多くの場合、そのような資料は系統的に保存されていない。その貴重性からみて、例えば防災科学技術研究所のような研究機関が進める特定のプロジェクトなどを対象に、プロジェクト遂行の過程で、収集された関連資料や中間処理資料等について、そのデータベース化への方策を具体的に探る活動などが必要である。


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