4.統合化へのロードマップ

4−1.「統合化」へ向けた意識の開拓

 これまで統合化地下構造データベースの必要性と地下構造データベースの現状や統合化への課題について述べてきたが、統合化を実現するためのロードマップを考えたとき、まず、統合化へ向けた意識開拓のため、地下に関する情報は公共財産であるとの共通認識の醸成が必須である。そのためには、地下構造データベースの統合化についてのシンポジウムやワークショップを適宜開催し、地道な啓発活動を継続することなども有効な手段となる。
 地方自治体等の意見として、データの流通を円滑に促進し、流通を図るためのインフラ等を運営するために、制度面での整備を望む声があったことから、併せて、諸外国の地下構造データ収集・保管に関する制度について詳細な検討および研究を行い、我が国においてもその法的制度整備に向けた準備活動に着手すべきである。その際には、知的財産権・所有権の保護を考慮し、個人情報とのバランスに十分配慮した運用方法を検討し、確立することも視野に含めた検討が望まれる。
 統合化地下構造データベースの当面の目標としては、利用目的が明確で公益的な成果が期待できる地震防災分野を主たる対象とする。データベースの内容としては、地震動を予測するために必要な、地球物理学、地質学、地理学などの学術情報や工学目的の調査情報および被害素因を形成する事項についての行政地理情報などが含まれる。

4−2.データの蓄積

 統合化地下構造データベースを活用してゆくためには、既存資料の集積のみならず、今後新規に発生するデータの蓄積をいかにして促進し、維持するかが、運用上の成否に関わる重要な要点になる。さらに、データ品質を確保することも必要である。
 データ蓄積を促進するためには、継続的なデータの蓄積を保障する仕組みが必須であり、例えば、公共の機関への調査資料の提出を義務付ける、あるいは、公共の機関は資料を利用可能な電子データとして公開する義務があるとするという方法がある。
 蓄積されたデータの維持においては、利用環境を保持の観点から専門運用機関が実施することが妥当であると考えられる。専門運用機関が主導的に運用方法の統一を図り、品質の確保にあたるのが理想的である。防災科学技術研究所は、これまで蓄積したデータを提供する有力なエージェントであり、専門運用機関のコーディネイターとして、当面その役割を果たすことは可能である。
 地下構造データベースが保有するデータの品質確保は重要な課題である。特に、浅部地下構造に関わる工学的調査資料については、品質を確保するために基準となるガイドライン、指針ないしJIS化を図ることが肝要である。この点については、関連する官学民の機関に強く働きかけて行く必要がある。

4−3.データの流通

 データの円滑な流通は、地下構造データベースの活用にあたって、実務的に最重要の課題である。高度情報化社会での電子政府等の施策に沿い、インターネット環境を最大限に利用した電子形態でのデータ流通が前提となるべきである。
 インターネットで流通するデータは一定の形式あるいは標準的な形式を定め、その形式で流通することが望ましいが、データを蓄積する場合のデータ形式と流通する場合のデータ形式とは、必ずしも同一であることを必要としない。このことは、利用者側のデータ利用形態が必ずしも一様とは限らないので、それぞれ用途に応じた形式に変換することを容認する柔軟なシステム構成とすることが必要である。
 流通に当たっては、地下構造データが取得された場所における個人ないし法人の社会的・経済的活動を著しく制約し阻害する可能性があると認められる場合には、一定期間、公開を猶予するなどの対策を検討する必要がある。
 防災科学技術研究所が進めているデータベースでは、インターネットによるデータ検索、問い合わせ、配信を主たる利用の形態であると想定し、個々の調査データ(群)についてその概要的な内容をもつXML形式のメタファイルを作成している。さらにデータの実体をなすファイルについても、可能なものについてはXML化を図り、インターネット上でのデータ配信に向かって、拡張性を保持するよう配慮している。今後、より高度な統合化を推進するために、より広範な利用に応えられる汎用的なデータベース形態についてさらに検討を加える必要がある。
 統合化地下構造データベースは、当面、地震防災関連での利用を前提としているが、そこに含まれるデータは、地震防災分野に留まらず関連する他の分野(例えば、地質災害、地下水保全、環境保全など)においても、基盤的情報となりうると考えられる。そのような他方面での利用を想定したデータ流通が将来的に可能となるよう、発展的に捉えられるべきである。


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