地震防災のための統合化地下構造データベースについての提言を、以下にまとめる。
提言1: 地下構造に関する系統的な調査研究の必要性
地震防災の基礎となる強震動予測の高度化のために、表層から地震基盤に至る地下構造調査資料の蓄積が不可欠であり、関連の調査研究を系統的に継続する必要がある。
表層から工学的基盤までの浅部地下構造および工学的基盤から地震基盤に至るやや深い地下構造についての調査研究は、全国的に見て限定的な範囲にとどまっている。従って、今後強震動予測の高度化を図るためにも、調査研究を系統的に継続する必要があり、そのための施策が必要である。
提言2: 地下構造データベースの必要性
地下構造に関する調査資料やデータを統合的に収集、管理するしくみとして、統合化地下構造データベースを整備すべきである。
地下物質の物理的・化学的性質とその分布等に関し、資源開発事業、公共事業、その他の開発事業(民間を含む)、環境保全事業、学術研究などの諸活動により取得される調査研究資料は、国土の保全、環境の維持・改善および防災などの観点から、国土の基本情報の一部をなす国民共通の知的公共財産として位置付けられるにも関わらず、現状ではそれら地下構造に関する調査資料やデータを統合的に収集、管理するしくみが存在していないため、散逸する傾向にある。
したがって、地下構造に関する調査資料やデータを集約した統合化地下構造データベースの整備は急務である。
提言3: 一般社会への働きかけ
地下構造データは防災等に関する基本的でかつ公共的な情報であるとの観点から、その共有化と活用について一般社会の理解を得るとともに、意識向上・醸成のための施策が必要である。
自治体等が行う防災対策のみならず自主防災についても、市民の生活基盤となる大地の構成や成り立ちについて、十分な情報が与えられ、適切な専門家の助言があれば、より効果的な予防対策が可能となり得る。地下構造に関する情報の共有化について社会や市民の意識をさらに醸成する目的で、図上訓練、公開講座、シンポジウムなど各種の機会を利用し、その理解を深める努力が必要である。これらの作業は、地域の地盤環境の特殊性や局地性などと被害の起こり方についての理解を深めるための有効な教育機会にもなり得る。
提言4: 法的整備による流通促進
地下構造データの収集と利活用を図るため、既往の諸制度および個人情報の保護等に配慮しつつ、必要な法的な環境整備について検討を進める必要がある。
各種団体等がその独自の調査資料等を整理しデータベースとして保管し、積極的に公共の利用に供するための環境を整備する施策をさらに推進する必要がある。データベース構築主体に対する財政的、制度的、かつ人的側面での支援や、データの取得、保持、開示の義務、および利用に関わる諸権利(所有権、財産権など)の調整あるいは新たな法的根拠付けなどの検討を進めるべきである。
提言5: データの収集と運用の仕組み
地下構造に関するデータを継続的かつ機関横断的に収集整理するため、公共的な仕組みを構築すべきである。
地下構造に関する調査資料やデータについては、その実施目的、内容、分野を問わずデータの取得及び利用に関わる関係機関を横断的にそれら資料データを継続的に収集して、公共のデータベースを構築し、その円滑な利活用を図るための仕組みを構築する施策を推進するべきである。
工学的基盤付近およびそれ以浅については、建設事業に伴う地下調査ボーリングによるものが多く、年間20万ないし30万本といわれている。このようなデータを組織的かつ継続的に統合的地下構造データベースに取り込んでゆくための施策が必要である。
提言6: データの取得と電子化
既に取得されたデータおよび今後新規に取得されるデータ、特に浅部地盤に関連する資料については、組織的かつ継続的に統合的地下構造データベースに取り込んでゆくための施策が必要である。
今後新規に取得されるデータだけでなく、既往資料についても紙ベースの資料については順次電子化を進めることを可能とするための環境の整備が必要である。すでに電子化されているものについては最新の計算機環境への更新を行うなどし、データベースとしての機能を十分発揮できるよう整備される必要がある。
提言7: 標準化とネットワーク利用
地下構造データの利用を促進するため、ネットワーク上でのデータ交換規則について検討が行なわれる必要がある。
統合化地下構造データベースは、利用目的に沿った各種のデータベースに蓄積されているデータのインターネット上での公開(開示)を基礎とし、データベース間およびデータベース対利用者間のデータ交換・流通をスムースでシームレスに行う環境、すなわち「データ流通ネットワーク」として構築されるべきである。このために、データの交換形式の書式・内容などについての規則のJIS化などにより標準化され、その普及が図られるべきである。
提言8: 当面の役割分担
独立行政法人防災科学技術研究所は、地下構造データおよび研究成果をデータベース化し、現状の法環境の下で開示可能なものについて順次積極的に公開するなどし、統合化地下構造データベースへ向け積極的な役割を果たすべきである。
本来、統合化地下構造データベースは、国と地方自治体や関係機関が相互に連携して進めるべきであるが、当面の実質的な作業として、独立行政法人防災科学技術研究所は、その活動により取得、収集した地下構造に関するデータおよびそれらを基とした研究成果をデータベース化し、現状の法環境の下で開示可能なものについて順次積極的に公開するよう活動すべきである。特に、地震防災の側面で、特定プロジェクト「地震動予測地図作成手法の研究」および文部科学省リーディングプロジェクト「高度即時的地震情報伝達網実用化プロジェクト」などの成果については、文部科学省地震関係基礎調査交付金による調査研究成果とともに、早期に公開されるべきである。
また、関連する各種団体(国、自治体、独立行政法人、民間)においても相互協調的にデータ開示を進めるべきである。そのために、監督官庁等も含めた技術的交流を進め、ネットワーク化によるデータ共有・交流への検討を開始すべきである。
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