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複数の単位区間が同時に活動する連動モデルの地震発生確率の計算方法
地域評価の対象となった活断層では、複数の単位区間が同時に活動する地震がモデル化されています。本記事では、その発生確率の計算方法を、西山断層帯の評価基準日が2020年1月1日の30年発生確率を例に説明します。
説明の便宜上、次のように記号を割り振ります。
- A: 西山断層帯大島沖区間
- B: 西山断層帯西山区間
- C: 西山断層帯嘉麻峠区間
- AB: 西山断層帯(大島沖区間と西山区間が同時に活動)
- BC: 西山断層帯(西山区間と嘉麻峠区間が同時に活動)
- ABC: 西山断層帯(全体が同時に活動)
計算手順毎の発生確率の値を表1に示します。(1)から(4)の手順で各区間に割り振った確率の合計値が、求める発生確率となります。
表 1 計算手順毎の発生確率の値
区間記号 | 区間概要 | (0) | (1) | (2) | (3) | (4) | (1)-(4)の合計[%] |
---|---|---|---|---|---|---|---|
A | 大島沖 | 1.97E-02 | 9.85E-03 | 0 | 0 | 6.90E-03 | 1.7% |
B | 西山 | 1.18E-02 | 5.90E-03 | 0 | 2.12E-03 | 0 | 0.80% |
C | 嘉麻峠 | 4.99E-03 | 2.50E-03 | 8.32E-04 | 0 | 0 | 0.33% |
AB | AとBが同時に活動 | – | 0 | 0 | 2.12E-03 | 0 | 0.21% |
BC | BとCが同時に活動 | – | 0 | 8.32E-04 | 0 | 0 | 0.083% |
ABC | 全体が同時活動 | – | 0 | 8.32E-04 | 0 | 0 | 0.083% |
(1)各活動区間の発生確率(または発生頻度)の1 / 2をその区間単独の活動として割り振る
各活動区間の発生確率は、表 1の列(0)のようになっています。1/2をその区間単独として割り振ると表1の列(1)のようになります。
※各活動区間の発生確率は全国地震動予測地図2020年版 作成条件・計算結果編 付表1.1-1に記載されています。
(2)残りの発生確率について、最も発生確率が小さな活動区間を対象に、その区間が関係する単独活動・同時活動の全パターンに対して均等に分配する
最も発生確率が小さいCを対象に、Cが関係する単独活動C、同時活動の全パターンBC, ABCに均等に分配します。3パターンあるため、2.50E-03 / 3 = 8.32E-04をC, BC, ABCに分配すると、表1の列(2)のようになります。
(3)その次に発生確率が小さな活動区間を対象に、その区間から(2)で付与された発生確率を減じ、残りの活動パターンに対して均等に残りの発生確率を分配する
Bを対象に、(2)でBC, ABCに付与された確率8.32E-04×2をBの残りの確率から減じた確率(5.90E-03 – 8.32E-04×2)を残りの活動パターンB, ABに均等に分配します。この結果、表1の列(3)のようになります。
(4)残った活動区間に対して、(3)と同様の処理を繰り返す
区間Aを対象に、(2),(3)でAB, ABCに付与された確率(2.12E-03 + 8.32E-04)をAの残りの確率から減じた確率{ 9.85E-03-(2.12E-03 + 8.32E-04) }をAに分配します。この結果、表1の列(4)のようになります。