プロジェクト全体の説明
地震動予測地図作成プロジェクトの経緯についての説明です。
阪神淡路大震災をうけて
1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震は、6,400名を超える犠牲者を出し、我が国の地震防災対策に関して多くの課題を残しました。特に地震に関する調査研究に関しては、その研究成果が国民や防災機関に十分伝達される体制になっていないとの指摘がなされました。この地震の教訓を踏まえ、全国にわたる総合的な地震防災対策を推進するため、議員立法により、1995年7月に地震防災対策特別措置法が制定されました。同法に基づき、行政施策に直結すべき地震に関する調査研究の責任体制を明確にし、これを政府として一元的に推進するため、政府の特別の機関として地震調査研究推進本部が総理府に設置(現在:文部科学省に設置)されました。
地震調査研究推進本部
地震調査研究推進本部は、1999年4月に、今後10年間程度にわたる地震調査研究の基本方針、活動の指針として、「地震調査研究の推進について-地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策」(以下では総合基本施策と呼ぶ)を策定しました。総合基本施策では、地震防災対策の強化、特に地震による被害の軽減に資する地震調査研究の推進を基本的な目標に掲げ、当面推進すべき地震調査研究として以下の4つを主要な課題とし、このために必要な調査観測や研究を推進するとしました。その4つの課題とは、①活断層調査、地震の発生可能性の長期評価、強震動予測等を統合した地震動予測地図の作成、②リアルタイムによる地震情報の伝達の推進、③大規模地震対策特別措置法に基づく地震防災対策強化地域及びその周辺における観測等の充実、及び④地震予知のための観測研究の推進です。
全国を概観した地震動予測地図
特に、地震動予測地図の作成は推進すべき主要課題の筆頭に掲げられ、これに基づき地震調査研究推進本部地震調査委員会では、「全国を概観した地震動予測地図」の作成を開始し、平成17年3月に2005年版の予測地図が完成し公表されました。その後、毎年度新たな評価結果を取り込むことにより「全国を概観した地震動予測地図」の更新が行われてきました。こうした中、2009年7月にはこれまでの10年間の検討のとりまとめとして、各種データの追加や作成手法の高度化により、これまで約1kmメッシュで表現された地図が、約250mメッシュに細分化された表現になる等、大幅な改良が加えられると同時に名称も変更され、「全国地震動予測地図」として公表されました。
地震動予測地図作成手法の研究
防災科学技術研究所では、「地震動予測地図」の作成に資するため、2001年4月より特定プロジェクト研究「地震動予測地図作成手法の研究」を立ち上げ、地震動予測地図の作成に資する技術的な検討及び地図の作成作業を行ってきました。第2期中期計画期間においても、「地震動予測・地震ハザード評価手法の高度化に関する研究」(2006~2007年度)、「災害リスク情報プラットフォームの開発に関する研究」(2008年度~)において、地震動予測地図の高度化に資する研究を実施してきました。
東日本大震災をうけて
こうした中、2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生しました。東北地方太平洋沖地震は、地震動予測地図作成の基礎となる長期評価でも十分にとらえ切れていませんでした。この地震の教訓をもとに、長期評価、強震動評価手法の改良に向けての検討が開始されています。防災科学技術研究所では、2011年4月より第3期の中期計画期間に入り組織改定が行われました。その中で、「自然災害に対するハザード・リスク評価に関する研究」プロジェクトが開始され、東北地方太平洋沖地震を踏まえた上での「地震動予測地図」高度化に向けた取り組みが続けられています。